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仲谷塾長のエッセイ・論文集J |
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「生活文化を体感できる"街"デザインを描け」 大阪商工会議所"大商ニュース"2001年10月25日号掲載
■シナジーを発揮する大阪の集客装置群 4月から8月の大阪市内ホテルの客室稼働率は、平均で約80%をこえ、前年比較10ポイント近く上がった。 この4月に開業した大阪の新しい集客装置USJが、予想を上回る遠隔地来場者を集めた結果だ。 ここ10年以上オーバーサプライに悩んできた市内ホテルが、遠隔地からの来場を可能にし、ホテル供給がUSJ需要をふくらませたともいえる。 前年開業した北区の国際会議場の健闘も見逃せない。 国際会議場もまた、USJ効果を充分活かし集客を伸ばしているのだ。 当然ながらここでもホテルの存在が大きく寄与している。 その他、この春開催されたアジア競技大会の成功を見ても、スポーツ施設の整備が実を結びつつあることがわかる。 USJ、国際会議場、スポーツ施設、ホテルがシナジー(相乗効果)を生み、大阪の集客装置として大きな力を発揮し始めた。
■もう一つの都市集客装置とは しかし、テーマパークを始めとする集客施設やホテルは、その都市固有のものではない。 初めての都市(まち)を訪れたビジターの心を捉えるものが、もっと身近にある。 10数年前、フランス人夫妻に大阪の街を案内した事がある。 都心のビル街、百貨店、地下街を案内したが、どうやら心を動かされないらしい。 ふと思いついて、千日前から、法善寺横丁、道具屋筋界隈に足をむけた。 三つ星レストランのオーナーシェフ夫妻の目は輝きはじめ、「どんぶり鉢は、娘達の朝のカフェオレ用にお土産に、社長室と書いた日本語の名札は、自分のオフィスに架けようか」と、大はしゃぎとなった。 ビジターは、そこに住む人々の生活のかおりと温かみが体感できる時、異郷を旅する実感にひたれる。 そして、それが思い出となって彼らの心に残る。 都市を構成する"街"そのものが集客装置とならなければならないのだ。
■商いを体感する街デザインを目指して 南船場から南堀江にかけて、若者を中心にショピングや飲食を楽しむ人の動きが活発である。 古くから卸売"商い"の街として栄えた街が、今や個人消費の"商い"の街として生まれ変わろうとしている。 近隣のビジネスマンや生活者の息吹が感じられる街に点在する店舗では、ファッションや生活関連グッズを求め、市内外のみならず北陸、山陰、山陽や四国から訪れる人が増えている。 この街で作られ販売されているオリジナルジーンズには、遠く海外から買い求めに来る逸品も存在するのだ。
単なるショッピングなら、ネット購入でも可能だが、一方で、人々のニーズは何を買うのかではなく、どのような街で、どのように買い物や食事を楽しむかに移っている。 川下に位置する商いの胎動は、いずれ製造、企画、デザイン、システム開発と言った川上の街づくりへと広がりを見せるだろう。 集客都市大阪を形作る"街"デザインのコンセプトは"商い"、キィワードは生活文化の"体感"なのだ。
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