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仲谷塾長のエッセイ・論文集


1.曲がり角に来た日本のホテル経営
    〜日本のホテルは生き残れるのか〜
2000年9月

第2章
ビジョンなきチェーン展開の瑕疵

 
外資系ホテル運営会社の、出店(運営受託)条件の最優先ポイントは、
当該物件が自社の運営システムで収益上の成果を得ることができる
マーケット価値の有無である。 極めて厳格な出店マーケティング・リサーチにより
受託の可否を判断し、自社ブランドのポリシー、コンセプト、に適合した物件のみを
受け入れる。こうした入念な出店計画に基づいて外資系ホテル運営会社は
世界的に チェーンホテルを展開、その優れた収益力により成長のスピードを
早めている。 一方、日本型チェーンホテルは、経営者の人脈による情緒的、
政治的出店で あることが多い。 
安易な出店は、大きなつけとなって、親会社の経営を圧迫する。
先に言及した(株)新阪急ホテルの自社土地・建物売却は 高知、東京、京都の、
直営ホテル子会社における債務超過解消のための資金調達のためであり、
(株)ロイヤルホテルの資産売却益もまた、新居浜、小倉、広島、成田、早稲田の
直営ホテル子会社の債務超過解消にあてられる。 2000年3月期に施行された
連結決算の新基準への対応を迫られ、(株)ロイヤルホテルは、
本店リーガロイヤルホテル(大阪・中之島)の土地・建物を失い、賃借による
営業に 陥ってしまったのである。 (株)ロイヤルホテルの負債総額は、
海外出店分を 合わせ1千数百億円にものぼる。
 このように、日本のチェーンホテルの失敗は、

@ 出店マーケティングの欠如 加えて
A 本社のチェーン統括機能不足
B 運営システムの未整備
C 派遣人材難
D ブランド・マーケティングの欠如

に起因する。 本社のチェーン統括機能と、標準化した運営システム、
および派遣人材があってこそ チェーンオペレーションは可能であり、遠隔地での
ホテル経営は成立する。 創立65年の歴史を誇るリーディングホテル会社を
もってしても、上記4条件のハードルは高かったと言えよう。