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仲谷塾長のエッセイ・論文集


1.曲がり角に来た日本のホテル経営
    〜日本のホテルは生き残れるのか〜
2000年9月


第4章  運営システムは、現代の兵法書なのか  


欧米のホテル運営会社は、激しい競争の中で独自の運営システムを構築し、
日々新たな技術、知識を吸収しながら、絶えまなくシステム・アップを続けている。
これらの先端的ホテル運営システムは、それぞれのホテル会社にとって、
その業容拡大、収益力アップのため編み出された現代の"兵法書"であり
戦略教本なのである。これらの教本は、基本理念構築、意思決定プロセス、
人事システム、人材育成プログラム、アカウンティング(会計)、マーケティング、
情報システム、サービス品質管理、施設マネジメント、購買システム、
部門オペレーションシステムからなり、誰にも理解できるよう平易な言葉で
文字化、標準化され、チェーンホテル全店、全スタッフで共有できるよう、
各ホテルに整備されている。一方、長年にわたり、国際競合のない
閉鎖的な右肩上がりのマーケットに支えられた国内ホテル会社は、
前例・経験主義にもとづく職場慣習で運営されてきたと言っても過言ではない。
文章化された業務遂行基準は、あったとしても難解な規定を集めた
"べからず集"でありマーケットの動きに対応できる戦略教本では
決してないのだ。 マーケットが安定成長していた時代にあっては、
多くの日本のホテルは、教育水準が高く熱心で高品質な現場スタッフに
支えられ経営者は結果数字を分析するだけで事足りた。 
しかし、 激しい時代の流れと"変革"の嵐の中で、今、日本のホテルが
規範とすべき兵法書には、何も書かれていないのだ。
経営・運営運営システムの未整備は、営業部門のみならず管理部門にも
大きな影を落としている。 終身雇用制、年次序列に代表される硬直した
人事システムのもたらす人的コストの増大は、労働集約型と言われる
ホテル経営を少なからず圧迫している。
このように、外資"勝組"、国内"負組"の構図は、
彼我の運営システムの格差によって、もたされたのである。