1.曲がり角に来た日本のホテル経営
〜日本のホテルは生き残れるのか〜
2000年9月
第5章 経営は、総支配人を育成、権限委譲できるか
経営、運営システム以上に深刻な問題は、運営執行者である
総支配人の人材難である。先端的運営システムを駆使し
営業、管理両部門にリーダーシップを発揮、マーケットの変化に
対応できる前線指揮官の確保は容易ではない。
長年、経験、前例主義にもとづく合議制度で運営されていた
国内ホテル会社では、ツリー型の縦割り分業がすすみ、トータルに
マネジメントできる人的資源を育成する土壌が成立しなかった。
右肩上がりの高度成長経済にあっては、変化に乏しい類型的な
横並び営業で安易に収入を確保できたことから、財務、人事、総務など
管理部門にキャリアスタッフが集中し、戦略型総支配人は、
必要とされなかったのである。今日、マーケットが激しく変化し、
経営・運営システムの変革が求められる時代にあって、
外資系ホテルとの格差は、人的資源面でも大きく広がっている。
ホテル業界と同様に、業界界を支援すべき教育界の遅れも無視できない。
米国では大学教育において、ホテル経営に関連する学部、
学科が600以上あり、次代の経営幹部を養成している。
そのカリキュラムは、トータルマネジメント、マーケティング、
ファイナンス、ヒューマンリソース等、ベーシックな経営実践論の習得に
力点がおかれ、ホテルのみならず、広くサービス関連産業すべての
マネジメント幹部に適合する。また、その卒業生の多くは、
マネジメント型総支配人、事業経営のプロとして、
世界規模のチェーンホテルで活躍しているが、その中に日本人は、
ほとんど見当たらない。ホテル運営執行者である総支配人の人材分野では、
残念ながら日本は後進国と言わざるを得ない。
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