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仲谷塾長のエッセイ・論文集


1.曲がり角に来た日本のホテル経営
    〜日本のホテルは生き残れるのか〜
2000年9月


最終章 日本のホテルが超えるべき、部門戦略の重要課題とは


1〈宿泊〉IT導入とYield Management  

日本のホテル事業経営(運営)再生のキイは、利益率の高い宿泊部門の
売上強化にある。客室収入増にもっとも有効であるのは、マーケティング思想を
ベースにしたYield Managementの手法である。 しかし外資系ホテルでは
スタンダードであるこの手法を取り上げる国内ホテル会社はまだ少ない。
年間の利用者波動を、過去のデータに基づきフォーキャストし、更に 、
年次の特殊要因を加えて、販売戦略を構築する。複数の販売チャネルに対し、
波動を読み取り価格政策を迅速に実行する。こうして、限りのある客室を
"売り残しなく販売"し、収入を最大限に伸ばすことが
Yield Managementの概念である。ここでは、客室の予約担当は、
予約受付係りではなく、いわばマーケットを先読みする為替ディラーに
近い存在となる。加えて、今後の客室販売において、IT導入による
インターネット予約の成否がホテルの死命を征する。

2〈宴会〉宴会マーケット縮小化下における営業力強化

企業や、 団体の宴会は、縮小傾向にある。 今後パイの増大を望めず、
自ホテルの"特性"、立地に会わせたセールススタッフ、
加えてセールスを後方支援するマーケティングスタッフの強化が重要となる。
今後のホテル事業経営において、これら営業促進要員の資質、意識、
経営陣のリーダーシップ、マーケットのポテンシャリティ、
そして費用対効果の見極めが、キィポイントとなる。

3〈婚礼〉婚礼人口の急激な減少と多様化への対応

戦後の第二期の婚礼ブームは、
1970年〜74年生まれの団塊二世がマーケットの主流をなす1996年に
ピークを迎え、 急速に衰退期に入っている。 2000年の婚礼受注状況は、
都市部で、 前年同時期比較15%前後の減少となっている。
今後の人口動態からみたマーケット予測は、2000年度を基準値として、
2005年 85%、2010年 70%にまで縮小する。
また、海外挙式、レストラン婚礼などの婚礼需要の多様化により、
ホテル・式場マーケットは更に縮小すると予想される。
情報化時代にあって挙式者の個性化、高品質化、
適性価格化の傾向が強まり、優れた商品力、マーケティング力が要求され、
この分野でも"勝組"、負組"がはっきり色分けされる。
大阪地区にあっては1998年から1999年にかけ、既に20%のホテル・式場が、
完全廃業または部門撤退を余儀なくされている。

4〈料飲〉ホテルレストランからの決別

 かって、高級、高価格、高品質で 栄華を誇ったホテルのレストラン部門は、
今や、入店予測に苦しみ、 材料コスト、人的コストのコントロールが難しいことから、
宴会・婚礼部門以上に非採算部門に陥っている。 一般市場での、
レストラン業態の変革スピードは、予想外に早い。それだけ消費に
密接しているとも言える。  レストラン業態の変革は、より激しい競争を
勝ち残った、街のレストラン、外食産業から確実に始まっている。
ユーザーの目は、画一的なホテルレストランから、
より個性的な街のレストランへと移っているように見える。
ホテルレストランにおいて、嘗てホテル的と言われた伝統的業態では、
マーケットニーズに適合できず、カジュアルでフレドリー、
かつリーゾナブルプライスの新業態開発を実現出来ない限り、
安定的な来客数、収入が確保できない。 最近の例では、
都市圏のターミナルに立地する新規オープンのホテルや、
個性的な業態を開発した外資系以外、成功の例をみない。

(あすにむけて)

 日本のホテルの生き残りをかけた挑戦は、これからも続くであろう。
曲がり角にきた日本のホテルには、経営の変革、運営の再生、
人材の登用・育成、と課題が山積し、しかし残された時間は少ない。
一方、外資系ホテルにも、かげりが見える。 宴会・婚礼・料飲部門の売上比率が
70%にもなる世界に類を見ない特異な日本型ホテル業態においては、
ローカルマーケティングが極めて重要だからだ。
平均3年の総支配人在任期間では、外人総支配人に、首都圏はまだしも、
大阪をはじめとする地域特性の強いローカルマーケットに精通することを
期待することは難しい。  日本のホテルの"変革"と外資系ホテルの
"日本人総支配人"、生き残りをかけたキィ・ワードは見えた、
しかし道は遠い。 21世紀は、もうそこまできている。