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仲谷塾長のエッセイ・論文集A




ホスピタリティ・エッセイ @
=いまSERVICEからHOSPITALITYへ=  

                      大阪学院大学  教授 仲谷秀一


● 外資系ホテルの人気の秘密って、何?  

SERVICE技術の高さでは世界最高水準にあると自他ともに認める
日本のホテルも、最近では、外資系ホテルの追撃を受けています。 東京では、
新御三家と呼ばれるフォーシーズン、パークハイアット、ウェスティンの
外資系3ホテルが、しばしば前述の御三家をホテルランキングで
脅かしていますし、大阪ではリッツカールトンが人気を集めています。
外資系ホテルの人気の秘密を探ってみますと、それぞれが
ラグジャリーであっても個性的、加えて意外とフレンドリーであることに気づきます。   
ホテルを利用することが今ほど一般的でなかった30年前には、
日本のホテルの特徴である伝統と格式が、訪れる人々に大きな満足感を
与えたものですが、日本人の生活水準が向上し、海外旅行により
ホテル経験が豊富になった現在、もうそれだけでは感動を呼ばなくなりました。
日本のホテルも顧客ニーヅの多様化に対応すべく動き始めましたが、
外資系ホテルはいち早く、個々のお客様を楽しませ満足させること、
即ちHOSPITALITYをより強く意識し、その実現に向け組織をあげ
システム作りに取り組んでいます。


● HOSPITALITYは、システム作りと リーダーシップから  

では、外資系ホテルは、どの様にHOSPITALITYを 実践しているのでしょうか。 
リッツカールトンを例にあげたいと思います。「顧客の満足をすべてに
優先させる」と言うのが、このホテルの経営理念ですが、リッツカールトンでは、
この"言いやすく行いがたい"命題を、分かりやすい言葉と具体的な内容で
簡潔に表現した"ゴールデンスタンダード"と呼ぶ名刺大の小冊子を作成し、
従業員のみならず顧客にも常に宣言しつづけることで実践しています。
この小冊子は、リッツカールトン世界37の全ホテルで共通であり、
従業員一人一人の行動や判断の基準となっています。総支配人は
リーダーとして、 この基準を自ら実践することは無論のこと、従業員が基準を
実行するにあたり直面するあらゆる障害や問題を取り除くのに、
最大限の努力を 惜しみません。 総支配人の"信念と努力"が
ゴールデンスタンダードを可能にします。
では最後に、ゴールデンスタンダードの一部をご紹介しましょう。

"サービスの3ステップ"

1、あたたかい、心からのごあいさつを。
お客様をお名前でお呼びするよう心がけます。

2、お客様のニーヅを先読みし、おこたえします。

3、感じのよいお見送りを。さようならのご挨拶は心をこめて。
できるだけお客様のお名前をそえるよう心がけます。

正確で生真面目なSERVICEにとどまらず、相手の期待を読み取って、
その期待の少し上で応えるHOSPITALITYへ一歩踏み出すことが、
日本のHOSPITALITYビジネスの"大きな成功の鍵"ではないでしょうか。


● 付記 「HOSPITALITY MANAGEMENT」  

近年、米国のホテル業界は自らホスピタリテイ産業と位置づけ、CS(顧客満足)を
はかることにより、長期的、継続的に利益を生み出すことを究極の経営目標と
しています。この様な経営目標を達成するために必要な、運営管理、財務管理、
人材育成、品質管理、マーケテイングなどを含む総合的な経営手法を
HOSPITALITY MANAGEMENTと呼び、より幅広く外食事業経営、
更には病院経営にも応用されています。
 また、米国の大学にはHOSPITITY MANAGEMENT関連学部が約300あり、
将来の経営幹部を育成しています。


*このエッセイは、千寿製薬刊「Medi-Net」5号に掲載されたものです。