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仲谷塾長のエッセイ・論文集C



大阪ホテル最前線@
「ダイエーグループホテル売却、700億円で外資系へ」 

大阪新聞(H12年4月19日掲載)

 

【解説】
今春、大阪のホテル業界を駆け巡ったダイエーホテル売却劇も、夏を前に交渉決裂となった。その裏には、売却額に対するダイエー、外資投資ファンドのそれぞれの思惑が垣間見える。外資が考えるホテル価値は、事業収益性であり、日本企業のそれは、不動産神話である。平行線はどこまで続くのか・・・ 
国際会計基準時代はもう始まっている。


【記事】
 2000年3月期決算をひかえ、財務・人事リストラに明け暮れるホテル業界に衝撃が走った。 ダイエーグループのホテル売却が明らかになったからだ。 同グループは、メリケンパークオリエンタル、新神戸オリエンタルなど傘下7ホテルを米証券大手ゴールドマンサックスグループへ総額約700億円で売却することをきめた。

今回の売却劇は、日本のホテルビジネスの将来を左右する重大な予兆と言える。外資系ホテルの日本進出は1963年の東京ヒルトンに始まり、大阪でも大阪ヒルトン(1986年開業)、ウェスティン大阪(1993年開業)、ハイアット・リージェンシー・オオサカ(1994年開業)、ザ・リッツ・カールトン大阪(1997年開業)と続いた。しかしながら、これら外資系ホテルの実体は、資産と営業権の大部分を日本企業が所有し、運営のみをヒルトン、ウェスティン等ホテル運営会社に委託する言わば"雇われマダム"の状態であり、厳密には"外資系"と言いづらい。

ダイエーグループのホテル買収は、ゴールドマンサックスを買い手代理人として、米ホテル投資専門会社、ストラテジック・ホテル・キャピタルが仕掛けたものであり、さらにその背後には、真の買主であるユダヤ系資本が控えていると言われている。世界最強の"外資"の進出なのである。今後、ストラテジック社が、オーナーの代理人として、立地・グレード・業態に合わせてコンペを行い、最高の条件を出したホテル運営会社に運営委託する仕組みだ。 米国風ホテル経営管理の厳しさは、日本企業の比ではなく、ホテル運営会社は過酷な利益目標管理にもとづく減量経営を要求される。    

現在、ホテル運営会社として名前があがっている英バス社は、全世界で2800ホテルを、一方米スターウッド社は700ホテルを運営している。 世界屈指の資本力と、巨大チエーンホテルの運営力が手を結ぶことになる。  

しかしダイエーのホテル売却は、前哨戦にすぎない。今回の投資総額700億をはるかに超える4000億円のホテル投資プロジェクトが日本マーケットに照準を合わせている。 長銀買収で日本にも一躍名を馳せた米投資会社、リップルウッド・ホルディングスと世界1600ホテルを運営するメガチェーンホテル、マリオット・インターナショナルの"巨大黒船"連合艦隊の来航である。ホテル運営システムに多くの課題を抱え、運営責任者たる総支配人の人材難にあえぐ日本のホテル企業に残された時間は少ない。