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仲谷塾長のエッセイ・論文集E-3
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ホテルの明確なビジョンが顧客の支持につながる では、日本のホテルはどうすればいいのか。国内にもヒントはある。例えば、ワシントンホテルブループ(ブランド名=ワシントンホテルプラザ)だ。ワシントンホテル成功の第一のポイントは、明解なビジョンを打ち出しているところにある。それは、ホテルの「スーパーマーケット」を目指すと言う大胆な発想である。宿泊客のニーズをシングル主体に絞込み、運営システムを標準化して人的サービスを極小化した。徹底したサービスコストの削減と、反面、機能面の安全性と快適性を充実し、「利便性」と言う商品価値を低価格で提供することに成功した。キャシュバック方式をコアとした顧客サービスも、ターゲットのニーズに合致する。 さらにビジョンを一歩すすめて、ホテルの「コンビニエンスストア」を目指し、あらたなポジションニングで、新業態のブランド、R&B(Room&Breakfastの略)をリリースした。 「部屋と朝食」と言う必要最小限の機能に絞り込んで、しかも全室Tタイプ、Tプライスのシングルのみと商品を極限まで特化した。 ビジョン、システム、ブランドネームが一体となった好例である。 それとは対照的に、帝国ホテルは、人的サービス再検討にブランド再生を賭けたのが帝国ホテルだ。あえて"帝国らしさ"に再挑戦しブランド力を見事回復させた。 創業から110年、あえて"伝統"にこだわり、全社一丸となった「さすが帝国ホテル推進会議」はブランド再生委員会そのものである「挨拶」「清潔」「身だしなみ」「気配り」といったサービスの基本を「行動指針」として文章家した名刺大のカードを従業員一人一人が携行するようにした。 ビジョンやミッションを創るのは容易だが、実践は難しい。地道は取り組みだが、後に続く、多くの老舗ホテルに、とるべき道筋を示したともいえる。しかし、新たに構築された"伝統と格式"は、帝国ホテルにのみ許されるコンセプトであることを忘れてはならない。
大阪学院大学 流通科学部 教授 仲谷秀一
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