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サイバー講義 『戦略的ホスピタリティ論』

特別講義第1回「大阪発、日本型ホテル経営の変革!」

〜世界に類のない特異マーケットへの対応には、
グローバル・スタンダードの日本的着地が不可欠〜



2 所有、経営、運営の分離が、グローバル化の第一歩

過去20年間に倍増した大阪のホテル数は、慢性的な供給過剰を生み、バブル崩壊に追い討ちされ、ホテル各社の収益構造は急激に悪化した。大阪を代表する老舗ホテルも例外ではなく、2年前にはホテルプラザ、大阪コクサイホテルが廃業に追い込まれたことは記憶に新しい。もはや、各論的なローカルセールス&マーケティングや対症療法的リストラ策では、経営再建困難な段階に来ている。経営の大きな枠組を再構築する構造上の大変革をせまられているのだ。その大きな変革とは、世界におけるホテル経営のグランドデザインである所有、経営、運営の
分離にほかならない。

大阪の老舗ホテルの多くがそうであるように、日本のホテル会社は、自社で土地建物を所有し、直営する方式をとってきた。このように、日本のホテル会社は、内に不動産業とホテル事業を共存させていたといえる。資産が不良債権化し、有利子負債が経営を圧迫する状況下では、不動産業部分が、少なからずホテル事業の成長を妨げてきた。親会社から出向した経営トップが不動産管理的発想で、客商売に欠く事の出来ないホテル資産の
メンテナンスを怠ってきたからである。  

所有の分離は、皮肉なことに不良資産処理と連動して、外資投資ファンドのホテル資産買収として、現実のものとなりつつある。ホテル会社は、所有、即ち不動産業から離れ、ホテル事業本来の収益性を追求する運営会社として生きるか、自らオーナーとして、外資系ホテル運営会社に委託する所有の道を選ぶ事になろう。より大きな資本力をもつ、鉄道、航空会社系のチェーンホテルは、社内分社の形で、所有、経営、運営の分離をはかりつつあるが、これとて時価会計導入とともに、親会社に大きな枷となって重くのしかかることに変わりはない。

 

3 総支配人への権限委譲

 運営会社として生きることを選択したホテル会社は、経営と運営を明確に分離する必要がある。 従来、日本のホテル会社の多くは、会長、社長を頂点とした、合議、稟議制で経営されてきた。ここでは、運営責任者であるべき総支配人は、名ばかりで、経営トップおよび、人事、財務を統括する上位役員への根回しなくては、人、物、金を動かせないのである。言わばブレーキのない自動車を運転するに等しいホテル運営をせまられる。甚だしくは、ブレーキはおろか、セールス&マーケティングというアクセルすら与えられず、ハンドルを握る総支配人すら存在するのだ。これでは、顧客のニーズに迅速に対応するホテル運営は、実施不可能と言わざるをえない。ホテル事業執行(運営)のプロフェッショナルである、総支配人への権限委譲こそ、ホテル再生の道であるのだが。